フィリピンは経済発展が進む中、多くのフィリピン人が銀行口座を持っていない状況が続いています。銀行口座を持つことが当たり前と考えがちな人々にとっては不思議に思えるかもしれませんが、フィリピン社会には銀行口座を持たない多くの理由が存在しています。それでは、なぜフィリピン人が銀行口座を持たないのか、5つの理由を詳しく見ていきましょう。
1. 手続きが複雑で時間がかかる
フィリピンでは、銀行口座を開設するために必要な手続きが非常に煩雑であることが多く、これが口座を開設しない理由のひとつです。多くの銀行では、開設にあたり複数の身分証明書(政府発行のID)を求め、収入証明や住所証明の提出も必要です。しかし、地方部や低所得層では、こうした書類をそろえるのが難しく、十分なIDや書類がないために開設できない人々も多くいます。
さらに、フィリピンの多くの労働者は日々の仕事に追われており、銀行に何度も足を運ぶ時間がありません(待ち時間も1時間以上待つことも多々あります)。特に、労働時間が長い人や、不規則なスケジュールの中で働く人々にとって、何度も銀行に行って手続きを進めるのは大きな負担です。結果として、「面倒だから口座を作らない」という判断に至ってしまうのです。
2. 銀行への不信感が根強い
過去に金融機関のスキャンダルや経済危機があったことから、多くのフィリピン人は銀行を信用していません。フィリピンの歴史を振り返ると、特定の銀行が破綻したり、大規模な金融不正が起こった事例があります。これにより、銀行にお金を預けることに対する不安が根付いてしまっています。
特に地方部では、家族や親戚にお金を預ける、あるいは自宅で現金を保管する方が安全だと考える人々が多いです。こうした伝統的な価値観や慣習は、銀行よりも家族や信頼するコミュニティに依存する傾向を生み出しています。また、金融教育の不足も問題で、銀行の安全性や利便性を十分に理解していないことが、口座開設をためらう原因になっているのです。
3. 収入が不安定で預ける余裕がない
多くのフィリピン人は日々の生活費をギリギリでやりくりしており、銀行に預けるほどの余裕がないことが大きな理由です。特に、日雇い労働者や農業に従事する人々の多くは、収入が不安定で、生活費として現金をすぐに使わなければならない状況にあります。銀行口座を開設しても、口座維持手数料や最低預金額が発生する場合があり、これが負担になることもあります。
さらに、銀行に預けたお金を引き出すためには手数料がかかることもあり、そのわずかな手数料でさえ生活に影響を与えることがあるため、現金でのやり取りを好む傾向が続いています。特に地方の貧困層では、毎日必要な現金をすぐに手にできることが優先されるため、銀行の利便性は低く感じられるのです。
4. 地方には銀行が少ない
フィリピンの地方部では、銀行やATM の数が極端に少ないことが口座を持たない理由の一つです。都市部には多くの銀行が集まっていますが、地方では銀行の支店が少なく、アクセスが非常に不便です。田舎に住んでいる人々にとって、最寄りの銀行まで行くには長時間の移動が必要で、そのために交通費や時間がかかります。
さらに、銀行があったとしても営業時間が限られているため、労働時間との調整が難しく、実際に口座を開設することが物理的に困難な状況が生まれます。こうした地理的な障害は、地方に住む多くのフィリピン人が銀行サービスにアクセスできない要因となっているのです。
5. モバイル決済などの代替手段が普及
近年、フィリピンでは銀行口座を持たなくても使えるモバイル決済サービスが急速に普及しています。特にGcashやPayMayaといったサービスは、スマートフォンさえあれば、送金や支払いが簡単にできるため、多くのフィリピン人にとって便利な選択肢となっています。これらのサービスは銀行口座を持たない人々にとって、銀行の代替としての役割を果たしており、特に都市部ではスマホ決済が日常的に利用されています。
また、モバイル決済は手軽さだけでなく、手数料も安く、誰でも簡単にアカウントを作れるため、銀行口座を持つメリットが薄れているのです。フィリピン政府もこうしたフィンテックサービスを推進しており、銀行口座を開設せずに経済活動に参加できる手段がますます広がっています。
まとめ
フィリピン人が銀行口座を持たない理由には、手続きの煩雑さ、信頼性の欠如、収入の不安定さ、地方の銀行不足、そして代替手段の普及といった様々な要因が絡み合っています。こうした状況は、フィリピンの社会や経済における課題を映し出しており、今後の金融包摂の取り組みが注目されるポイントでもあります。特にデジタル決済の普及が進む中で、銀行の役割がどのように変わっていくのか、今後の動向に期待が集まります。